深夜の気分は最高

すべては妄想

夜中の恐怖体験

夜中に目が覚めた。

一瞬見覚えのない天井に不安になる。

でもすぐに祖母の家に泊まっていることを思いだし安堵する。

 

尿意を感じた。恐らくそれで目を覚ましたのだろう。

私が寝ていたのは仏間とふすまでへだてられた隣の部屋で、ふすまは閉められていなかった。

 

仏間は豆電球がつけっぱなしにされてあかりがこちらの部屋にもかすかにひろがって薄ぼんやりと辺りの様子を知ることはできた。

私は立ち上がり、トイレに向かおうとした。

しかしふいに何かの気配を感じて、隣の仏間に目をやった。

 

仏壇の上の壁に祖父の遺影がかかっている。

薄くなった頭頂部、痩せていて頬が少しこけている、鼻はだんご鼻で、口はむすっと閉じられている。そして眼球がぐるぐると動いていた。

 

私はパンツの中におしっこをすべてだして、それから大騒ぎで眠っていた他の家族を起こした。母が電気をつけた。

 

不満げな声をあげる家族たちに遺影を見て!と指を指すわたし。

遺影に視線を向ける家族。

 

そこには遺影のおじいちゃんの上を歩く小さな蜘蛛がいるだけだった。

 

失禁ものの作品を見るたびに、わたしはあの夏の頃の恐怖体験と家族の冷たい視線、そしてあたたかな股間のほかほかを思い出し涙が出るのだった。